アイヌと縄文 瀬川拓郎 ちくま
アイヌと縄文 瀬川拓郎 ちくま
同じ縄文人を祖先に持つからと言って
2千年以上も異なる歴史を歩んできた私たちは
互いに補い合う精神的な文化を選んだアイヌと
権利を主張し合い知識による文明を目指す弥生文化を選んだ本土人を
同一視することはできない
しかし現代の日本人として縄文的精神文化を振り返り
彼らが大事にしてきたお互いの関係に自主的な参加をする全体感という
総合的な生き方を取り戻すことが可能なのだとつくづく思わされた
それにしてもアイヌと一口に呼べないほどこの二千年は多様であり
意思を貫きながらも生き延びるために
互いを補い合う譲渡の文化と駆け引きによる交易の二刀流を使い分けた
したたかさに頭が下がる
所有意識がもたらした侵略という競争に依存する行為が
物的な文明の促進のみを目的にする視野の狭さを
育ててきたことの愚かさに気付かされる
そろそろ欲ばかりでなく自主的な選択で
前向きなしたたかさを手にして私達も
墓穴の中から這い出すことが大事なのだと
この本で学ばなければならない峠を向かえているのだと思う