隣のアボリジニ 上橋菜穂子 筑摩書房
小説家で有名な文化人類学者によるフィールドワークのお話
先住民は遠くに在りて思うもの
という意味から上橋さんは学者の調査研究としてではなく
海外派遣の教師という立場でオーストラリアに潜入して
アボリジニの生徒がいる小学校を選びました
日々の暮らしの中でできるだけ対等な関係のお付き合いから
彼らの伝統文化と現状の中での生き方を吸収しようと考えたようです
この本の全体を通して
客観性を保ちながらも心の機微に注目している様子がうかがえます
歴史を戻す訳にはいきませんし現状を受け入れた上で
過去も精算しつつ今から迎える未来を個人の単位でいかに棲み分けて
お互いを補い合いながら信頼感を育て自由自在性を確保できるかという
壮大で視野の広い意識を目指して
個々の存在と全体の調和を模索し続けることなのだと思う