ピダハン ダニエルエヴェレスト みすず書房

ピダハン ダニエルエヴェレスト みすず書房
 
アマゾンの奥深くに住む300人ほどの民族
独特の文化と言語で貫く自身に満ちた人々
彼らの言語の調査と聖書の翻訳を兼ねて
言語学者でありプロテスタントの宣教師でもある著者が
一石二鳥を引っさげて村に住み込んだ体験談
 
それにしてもピダハンは心の広い人々である
「蛇がいるから寝るなよ」と
ユーモアとも忠告とも言えるお休みの挨拶
事実仮眠しかしないしお互いを認めて
赤ん坊すら対等に付き合い
個々の自律を大事にして自由自在に暮らし
よそ者も歓迎するし毛嫌いはしないけれど
距離をわきまえず指図されたりすることを嫌う
 
五感による体験と発見を信頼し
寓話や神話や創世記などには見向きもしないから
遠い過去や未来にも関心がなく
つまり今現在に生き
必要以上の物欲もないから争うことも少ない
所有欲がないということは当然ながら
若干の栽培もするが殆どは狩猟採集である
死は当然のこととして受け入れているし
悲壮感も恐怖感も少ない
よく働きよく遊びよく笑い冗談も大好きで
全てを愉しみとして受け入れる
 
すべてが違うものだと認識しているから
数の概念があまり無く
左右という自分を中心とする方向概念もなく
河の上流と下流という全体感で方向を把握している
目に見えない絶対神は認めないけれど
精霊は動植物と同じように見えるし
話もできるらしく認めていると言う
 
ダニエルはミイラ取りがミイラになって
ついには無神論者となることで離婚もすることになり
学者一本で生きることに成るという最後の章が
私には最高に面白かった

狩猟民族は所有意識が低く自律心が高いとして
最後に残る疑問は
生き甲斐ややり甲斐が有るのか無いのか?
有るとすれば何に対してなのか?
無いとすれば生きる意欲をどこに求めるのか?
 
ダニエル曰く:
「認知とは学習されるもの
私達は世界を2つの観点から見聞きして感じ取る
理論家としての視点と宇宙の住人としての視点と
それも私達の経験と予測に照らし合わせているのであって
あるがままの姿で見て取ることは無いと言っても良い」