人生の意味の心理学 アドラー アルテ

人生の意味の心理学 アドラー アルテ
 
まるでブッダが示した空と縁起のような内容を
この本は具象的に噛み砕き世にまれな全体観をとらえて
視野の広いシナヤカな生き方を示している
素晴らしい本だと思うが
使う言葉の組み合わせや造語が分かりにくいのと
直訳のためかテニヲハや語順がおかしいのが難点だろうか
岸見さんの文体が説明しすぎだからだろう六法全書のように読みにくい
 
「人生の意味の心理学」というタイトルを例えにして言うならば
せめて「人生の意味を問う心理学」
~どんな人生設計があなたに生きる意味をもたらすのだろう~
ぐらいにしてほしかったと思う
そしてこの本の13ページにその意味が示されているのだけれども
ここにも私なりの異議がある
全体への貢献という部分であるがそれは結果論であって
底に至る前に本気で自分を大切にすることで
自分が何者なのかを知るために目の前の世界を鏡として
そこに映し出されている我が身を五感で感じ取ることから
人生が始まろのだと思う
そのためにこそ相手とか全体に幸福であってもらうことが大事になる
部分でもあり全体でもある自分の個性を認識した上で
自らの個性と抽象的な集合意識と繋がる自意識を育てることが
全体観を養うことへと結びつき
又全体からのフィードバックと言う相乗効果を得ることにもなる
 
部分同士が互いに嘘と秘密で競い争うのでなく
互いの信頼によって切磋琢磨し合う関係に至るべく
選んだ体験による知識を客観的に咀嚼することで
全体を理解できるだけのより視野の広い意識を学ばなければならない
また過去をベースとして原因と結果に取り憑かれた依存と搾取で
今現在を選んで出会う冒険を台無しにするよりも
過程としての今に集中してその全体の成り行きを愉しむべきでだろう
 
岸見さんの声は低くゆっくりと核心を突きながら迷いのない言葉で話す
心理学者として患者と向き合いカウンセリングもしてみえるそうだが
嘘や秘密による掛け引きなどもなく社会的価値観を無視した話法で
相手を呆れさせたり傷付けたりしても次第に信頼関係を
生み出せるようである
社会的価値観に迷い込んでいる読者や患者を
その気にさせる説得力が話の随所にあると言うことなのだろう
 
それにしてもソクラテスの言葉を後世にわかりやすい文章で伝えた
プラトンのような通訳が
アドルフアドラーにも岸見一郎さんにも必要なのだろう