縄文人と弥生人 片山一道 昭和堂
この本は考古学の発掘による古人骨から歴史を紐解き
縄文人が南太平洋からアメリカ大陸へ渡った形跡も追いかける
弥生期における渡来人による侵略の証拠も定かでなく
交流によるものか
金属器と農耕による物資文明と思想の輸入という可能性もあるだろうと著者は見る
1万4千年前急速な温暖化が起こり
日本列島が大陸から日本海で遮られて出現した
暖流に挟まれて四季を持つ多様な条件の揃った陸地ができた
北方系と南方系の動植物に海産資源に恵まれた
有史以前の旧石器時代から1万年以上に渡って10万人前後の縄文人が
狩猟採集経済によって大きな変化もなく平和にこの列島で繁栄することになる
対岸の大陸では農耕経済による所有制度による利権社会で
差別と対立の縄張り関係が生まれた文明社会が現れていた
紀元前2~3千年前には大陸からの物質的な合理性と金属や稲を伴った
契約経済思想と文明が渡来してきた
競争意識が起こり人口を増やし縄張りの拡張が目的として入れ替わった
この時どれ程の渡来人がいたのか定かでないが
分業しながらも弥生文明へと飲み込まれて行った
その後の古墳文化に至る弥生後期には相当数の渡来人があった証拠もあるし
縄文期の人骨は貝塚に葬られていた関係で多くの資料があるが
弥生時代の人骨資料は酸性の土壌に葬られたために現存するモノが殆どなく証拠を持たない
その上数少ない資料も縄文人に当てはまるものが多く渡来人を確認できない
◎干渉と相乗効果は紙一重 170304
縄文人の世界観 大島直行 国書刊行会
納得できる最後の七章を先に読むことをおすすめしたい
その後で本文に入れば飽きずに読み通せるだろう
現代の物的競争世界の価値観を当てはめて解釈するのではなく
1万年という単位のギャップを飛び越えて思いを馳せ
読み解いていくという姿勢で
大胆に踏み込んだ発想にも共感をおぼえるし
資料も揃っていて読み応えもある
不死・再生・誕生・命の蘇りとそれを育む子宮につながる
満ち欠けの周期を持つ月と羊水をイメージした水と脱皮するヘビ
などを通して精神性を求めたという説からなる
これをシンボリズムとレトリックという観念を使って
対等に縄文人の謎に迫ったということにも同調できる
又貝塚をゴミ捨て場とみず
再生を願う祭祀場と考えることにも同意する
更に所有に陥っている現代社会は物欲に特化した
格差という絶対の権利を主張する必要があり
自然摂理の補い合う全体観に包まれた環境に集う縄文人とは違い
普遍のシンボルである絶対的権威の象徴である太陽こそが
権力社会にとって重要な役割と成ると著者は言う
彼らは美や哲学を創造しているのではなく
実を求めて「効き目」を追求しているのだとも言う
知識も幅広く知的な内容だといえるのだけれど
そのくせ既成概念の抵抗が強いせいか
多様な全体観に結びつかない独善性が気になる
あまりにも思い込みが強いのか兎も角ひつこくクドイ
体制となっている学会の意見の違いを
攻め立てる姿勢にも辟易となる
この本の要点だけをまとめれば三分の一の厚みで収まるだろう
多様性に欠ける業界に物申す一つのアンチテーゼととらえて読めば
面白く読めるのかもしれない
彼自身が言う「考古学者見てきたような嘘をつき」を
自らはまり込んでいるようにも思える
写実的な表現は物的価値観に必要な技術であった
支配という神意識のない対等な関係にある縄文人には意味が無いことで
ひたすら再生を願い神話的世界をレトリカルに表現することが
重要だったとも読み解く
言葉の発生前後 170301
具象的な物理に特化した世界へと
人間の知識欲は所有欲を伴って
有史以来の狭い関係の中にのめり込んで来た
その過程で言語や文字が開発され
権利とディテールにこだわる文明社会が発展した
同時にその分意識による全体観はうとまれ
集う母性性社会から対立の男社会の権利システムへと
余剰生産物の発生と共に契約という建前制度の
お互いを縛り合う関係で歪みながらも成長して来た
それは信頼関係ではなくなり法秩序による
警察権を持った官僚支配へと進展して来た
その根底には余剰生産物を独り占めすることで
再分配の原則を嘘と秘密でごまかして
依存を決め込み権利を守るために
搾取と支配の縄張り体制を
騙しだまし作り上げて来た
言語と文字は物質的部分感を発達させて
集合的意識という全体観をしぼませて来た
しかしこの搾取も
地球上の全てを取り尽くしてしまう現在
次の飛躍へと踏み出さなければならない
有史以来となる今回の人間から真人への脱皮は
依存を卒業すべく自主的に
自律を目指すという意識転換をもって
大自然の法則に復帰し
調和による信頼の関係を取り戻すことになる