くらしのアナキズム  松村圭一郎  ミシマ社

 

 

くらしのアナキズム  松村圭一郎  ミシマ社

ここで言うアナキズム
無政府主義という意味ではなく
鶴見俊輔によると
権力による強制なしに互いに助け合って
生きていくことを理想とする思想だと言う
つまり相互扶助・切磋琢磨・自律共生関係
互いに与え・受け取り・返すと言う
三つの循環を満たすことで調和を目指す関係を
アナキズムによる集いと呼ぶ

出合いの構造からみる社会には
群れと集いの二種類があり
利害による群れ
地域による群れ
行動による群れ
血による群れ
情=家族による集い
愛=友による集いの五種類がある
「群れ性」の結束力は強いが
利害関係が崩れれば
可愛さ余って憎さ百倍となり
傷つけ合うことにもなる
「集い性」の粘着力は薄いが
違いを乗り越えて補い合うことができる

結果重視の唯物主義と違い
プロセス重視で人と人がゆるく
有機的に対等につながるアナキズム社会は
法という無機的な縦社会の権力構造と違い
集い性が高いのだと言えるだろう

平等社会は善人の善人によるユートピアではない
むしろ我欲という業を抱えた
不完全な存在だからこその仕組みなのだ

民主主義の根底には同意というコンセンサスがあり
多数決による勝敗民主主義とは相容れない
全会一致主義は封建的・作為的・少数派圧殺というよりも
あえて多数決をしない部落の暮らし第一主義なのだ