33年後のなんとなくクリスタル 田中康夫 河出書房

33年後のなんとなくクリスタル 田中康夫 河出書房
 
今になって33年前だという前作から読みだした
日記なのか日記タイプなのかドキュメントタイプなのか?
嘘臭くなくて新鮮で読みやすい
いかにも隠し事のできないというヤスオさんらしいのかも
 
流行や知識に無関心は人間にとって
読み飛ばす部分も多いけれどもそれなりに
時代を感じ取れる所もワルクナイし
愉しく暮らす生き方や仕事や恋や家族の素敵な関係とか
誰もが落ちこぼれなく暮らせる福祉の問題を
雑談として何気なく語り合う中に読者を惹き込んでくれる
 
無知故に国民自ら招いている
利己的中央集権における社会問題解決法満載だ
とりあえずの解決から抜本的な提案まで
シナヤカに取り揃えている
有名になったガラス張り知事室に始まり
脱ダム宣言・ふるさと納税・脱記者クラブ宣言・
知事会見の主催と進行を県が毎週自由参加で時間も質問も制限なく実施
村々での直接対話の車座集会
乳幼児と高齢者が共に日中を過ごす《宅幼老所》
ハコモノ行政を卒業して無駄を省いた軽快な行政
一家の母のような多機能・多能工な職員養成と法的充実
 
面白い特徴としては本文275ページに対して
註:として書き連ねている部分が何と
69ページもあってフォントも小さい
更に本文の最後の2ページは小さな字で
人口問題に対する統計のデーターである
 
主人公の由利がヤスオの《微力がだ無力ではない》との
言葉を頼りに探しだす人生航路
ヒューマンイノベーションマネージメント=
夢物語や損得に溺れるでもなく経済活動と社会貢献の融合
について学び実践していく
虐げられた女性の自活を可能にするグラミン銀行
ホームレスの復帰を促すビッグイシュー雑誌立売販売
由利が選んだのはヴィジョン・スプリング
上から目線で恵むだけの依存の関係でなく
物々交換の延長線上で何らかの遣り取りをして
持続性のある暮らしを成り立たせること
メーカーとユーザーの協力を得て
メガネやレンズを現地の人に格安で卸し
度の調整や修理の基礎知識を教えて行商までを可能にする
 
あるいは薬害問題に悩んでいる人達と薬剤業界の間で
中立な広報としての立場を確保して
出来る限りのお世話をすることを暮しの一部として
自己満足に終わらないように距離をとりながら
《自律を求めて連携を恐れず》
シナヤカに生きていくことを目指す
 
集うことの大事な点は嘘と秘密を無くすことと
政治や行政が本来やるべき筈の
一人ひとりの自在性を維持し対等で過不足のない再分配を
可能にする関係を取り戻すべく
すべての人に働き掛け合って行く必要があるだろう