茶の湯の羽箒 下坂玉起 淡交社

茶の湯の羽箒 下坂玉起 淡交社

 

心の底から湧き出す趣味ほど奥深いものはない

仕事と呼んでいる小心な利害に関わる社会的価値観に

飲み込まれた人生ほど軽薄なものはない

 

この本の著者はイラストレーターを生業としながら

茶の湯とバードウォッチングに惹かれた人生を歩むという幸福を

掴み取って来た個性の強い人であるらしい

 

この二つの趣味が重なり

「羽箒」という茶道具に特化した研究を可能にした

多岐にわたる視野の広い研究がこの本に盛り込まれている

 

一期一会の刹那を大事にする茶道の真髄に対して

真逆の過去依存することで成り立つ家元制度が

この真髄を今に伝えているというパラドックスも面白いが

第七章の「〜日本人と鳥の関係史」は特に面白い

鳥の羽が毎年生え変わる循環を知ることで

自然界に脈々と流れる生き様にあらためて感動した