騎士団長殺し 村上春樹 新潮社
読み出してじきに「なんとなく、クリスタル」が頭に浮かんできた
車にファッションなどの時代感覚や音楽への表面的な知識量を織り込む
おしゃべりな技巧的なところが似ているのかもしれない
兎も角時代背景をうまく取り入れ読者を惹き付ける博学な社会的価値観を
心得た小説に違いない
出だしは退屈なくらいにスロペースだったけれど
騎士団長の発見あたりから一気に読み飛ばすことになった
サスペンスとは異なるイデアだのメタファーだのを姿形として登場させ
人間を深く読み解いていくテクニックは素晴らしいけれど
芸術と言う単語が出てくるたびに色あせた薄っぺらなモノを
感じてしまうのも私にとっての事実である
結局小説というのはおおむね知性のある娯楽なのだろう
出合いと冒険の場 180110
■
ゲンロン0 観光客の哲学 東浩紀 genron
読み始めは屁理屈かと思いきや
終わりに近づくほど面白くなる
始めの内は進まず何度かバカバカしくなりながらの
二章の終わり頃までの感想は
混沌の中のリアリティーと言うプロセスを明確に見せてくれる内容であった
哲学が根源性を追求するものだとすればこの物語は
才走って道草を食っている状態にあるように見える
それは過去に根ざす縄張りの穏便な安全地帯から
覗き趣味の気晴らしをしている観光で
平和を良しとして求める第三者のナンセンスを
教えてくれる反面教師のようである
観光は時の流れの中で今を捉えながら
出合いの選択をし続ける冒険の旅と比べると程遠い
覗き趣味は選択の自由自在性を奪う代わりに
支配者が奴隷にあてがう娯楽でしかない
などと思いながら読み進む内に段々と面白くなって引き込まれることになる
多彩な知識が盛り込まれているだけでなく
咀嚼された深読みによる解き明かしにうなずけもするし共感もできる