哺育器の中の大人 精神分析講義 岸田秀 伊丹十三 朝日新聞社

哺育器の中の大人 
精神分析講義 岸田秀 伊丹十三 朝日新聞社


伊丹さんの回転の速さと博識の広さは尋常でないな〜
これを読んで彼の映画の切込みの鋭さに納得がいく

伊丹さんが岸田さんの講義を受けると言う設定の本だけれど
しばしば逆転する場面で議論が進行形に盛り上がって実に面白い

岸田論は人間の赤子は未熟で生まれるために本能が出来てあがっておらず
じぶんとその環境を認識できず後付の幻想で埋め合わせているから
宙ぶらりんなのだという
この未熟であることが人間のあらゆる状態に影響している

人間の心には3つの要素があると分析する
エス(本能的な要求や感情や)
スーパーエゴ(道徳やルールなどの社会性のことで超自我
エゴ(エスとスーパーエゴを調和させる機能のエゴ)

ちなみに動物はエス(本能)に規定された現実を中心に暮している
人間はエゴ(自我)を中心にバランスを取りながら生き延びているが
このバランスが取れずにエスが大きくなり板挟みになって苦しんでいる

心については特に部分である知識を寄せ集めても全体像を結ばない
粗末でも先に意識という全体像を持って知識でふくらませるべきだろう

最後の「ニホン人の精神構造」は実感があるので特に面白い
アイデンティティーの問題があるから自立(自律)できない
男社会が男であることを強要しそ所有欲のために競争原理と暴力が正当化され
強姦と言う現象を作り上げる
ナルシズム・サディズムマゾヒズムなどなどの問題も
未熟性がもたらしたという