キリンの子 歌集 鳥居 角川

キリンの子 歌集 鳥居 角川

 

母と二人で暮らす厳しい環境の中で

小学校5年の時家に変える母親が服毒自殺をしていた

そこからは施設の孤独な人生で過酷なイジメにあい

ホームレスも経験し八百屋で働く中で

新聞が友達となり短歌と出合う

 

あおぞらが、妙に、乾いて、紫陽花が、路に、あざやか なんで死んだの

と詠んだ

お月さますこし食べたいという母と三日月の夜の坂みちのぼる

鳩たちへ配って遊ぶ出掛けぎわ母が持たせてくれたクッキー

ほんとうに楽しみだった誕生日 砂糖のように家はくずれた

壊されてから知る 私を抱く母をしずかに家が抱いていたこと

オレンジの皮に塗られた農薬のような言葉をひとつ飲みこむ

墓参に供えるものがないからとあなたが好きな黄色を着ていく

空しかない校舎の屋上ただよいて私の生きる意味わからず

エレベーターに20分ほど乗っていた居場所がなくてスーツにまみれ

透明なシートは母の顔覆い涙の粒をぼとぼと弾く

 

読み返しているうちに胃液が込み上げてきそうになってたじろぐ