方丈記私記 堀田善衛 筑摩書房

 
堀田善衛という作家の人生観と生き様を支えたであろう
方丈記鴨長明の人生が選択した前向きで凄まじい
反逆児の道楽
 
後ろ向きに生きる所有と利権に依存した貴族社会の欺瞞に
溺れる虚栄心の中に収まり切れずにはみ出した
鴨長明も美意識に挑発された堀田善衛
又それを確認している私自身へと
大自然に対する人間社会の逆行に逆らって
大自然を視野に入れた前向きの本流に戻ろうとする
マイノリティーが延々と何千年も続いてきたらしい
末法三千年説とも重なる話でもある
 
釈迦もイエスマホメットも後ろ向きの物理的な力に利用されて
今では陰ばかりの存在に成り果てているけれども
その中で活き続けている調和によって自律を目指す
個の集いへの求心力がいつ日の目を浴びれるものとも知らずに
世界中にアウトサイダーとして脈々と息づいているのであろう
 
まさに今何千年の時を通して
方丈記に描かれた姿形が世界中に再現されている最中であることを
この本が示している
何かを学んできたとは思えないこの悪魔的社会という組織は
個々の人間にとって大事な反面教師としての必要悪なのだろうか?
 
文中で気付かされた所を抜書きしてみよう
48ページ
近衛文麿の書いた天皇に対する上奏文である
これによると軍人の多数も右翼も左翼も官僚も皆共産主義者であり
と言う
資本家と貴族以外は共産主義者だと恐れている様子がうかがえる
「遂に革命の目的を達せんとする共産分子なりと睨み居り候」とも言う
近衛文麿は共産革命を防止し国体を守るためにのみ戦争終結を急いだ
この国体とは天皇と貴族社会を指しているのであるり
こうしたわけで
責任の全てを転嫁することで逃げる依存心が支配階級に蔓延した
 
223ページ
藤原定家は実朝の求めに応じて曰く
言葉は古きを慕い心は新しきを求めと言う
この本歌取り文化は連綿として我々の文化と思想の歴史に生き続けた
こうして知識だけで意識の欠けた社会が今に至るまで植え付けられてきた