風が吹くとき レイモンドブリックス 小林忠雄 篠崎書店

風が吹くとき レイモンドブリックス 小林忠雄 篠崎書店

退職してロンドンから遠い田舎生活の余生を楽しんでいる夫婦が
第三次世界大戦の原子爆弾に遭遇するという場面の前後の話
テレビもラジオも新聞も手紙も牛乳配達すら来なくなった
その後の世間の様子が何一つ訪れずれない中で
水も食べるものを尽きて憔悴していく二人

信頼する政府と行政にパンフレットに振り回されながら
非常事態介助を待ち助けの来るのを待つ間の夫婦の会話
あてがわれた情報に慣らされた人達の稚拙だけれども
素朴で愛と情に包まれた暮らしと
建前だけの慇懃でよそよそしいだけのマニュアルとの落差に
絵本を読んでいられないほどの救いのない
悔しさや歯がゆさでたまらない気持ちに襲われてしまう

1982年サッチャーの時代に出版された本で
少し大人向けの絵本だけれども
かなり重たい内容で大事な事を伝えていると思う

題名はマーザーグースの子守唄からとったもので
ラストには不信心ながらも英国国教会の祈祷書から
詩篇23を途切れ途切れに思い出しお祈りをしながら
放射能に侵されて死んでいく

丁度めかくし状態の親方日の丸で暮らしてきた私たちのように
無知で視野が狭く自分で自分ことを決められない
奴隷か家畜のように育てられてしまった人間が
捨てられて行く悲しい自分を見ているようで
辛いけれども未来の為に気付きを得られる大切な内容だと思う

力作の絵も優しくて素敵です