芸術の起原を探る  横山祐之 朝日選書

芸術の起原を探る  横山祐之 朝日選書
 
先史時代のクロマニヨン人によって描かれた
洞窟の壁画が何を意味していたのかを追う
 
その中で芸術とは何かを問い
いつから人類が芸術に値するものをつくり出したかを問う
それは何らかの意味を強く持った表現意欲と
それを可能にする技術の取得を伴うことが重要なのであって
社会的価値観に媚びたものである必要はないのだろう
 
文字以前の模様のパターンだとされている記号と
何らかの意味を持っているシンボルとがあると言われている
又意志の刻まれた記号を
月の満ち欠けを記録したカレンダーと解釈したモノもあるが
道産芸術と判断できるのだろうかと
考古学者だけでなく動物生態学者などの他の分野の研究者と
共同研究をすることでより広い視野に立った考えを求めている
 
まだ戦争という依存心を持ち合わせていない
自然界の一員として存在するクロマニヨン人
身の回りにある限りの自然を克明に観察して記録し
表現活動に勤しんでいたようだ
 
実地に証明できるモノの範囲を情報としたものが
客観的に誰もが理解できる学問であると同時に
推測や仮説を叩き台として検証して行くことで
別の視点からの発想や気付きを得るべきであるだろう
その意味でメトミニー=換喩とメタフォア=隠喩を
視野に入れて考察することも有効であると思われる
 
これらを総合的に見るとクロマニヨン人の壁画は
生と死に関する世界観を表した表現活動だと言えるだろう