未来のための江戸学 田中優子 小学館

未来のための江戸学 田中優子 小学館
 
未来を奪い合う金融と過去を引きずる執着と権利による
右肩上がりのみの競争という暴力社会でなく
循環のプロセスを大事にする全ての部分の
それぞれが創る価値観を磨きだす
 
その教科書として江戸の内需中心の循環思想と暮らしがある
今を中心に過去の経験を参考に未来を描く
自分と相手の距離間を見い出す自在性と自由は違い
自由は勝手という距離感を踏みにじる暴力を内包している
 
非暴力なしに武装解除できないし
正当化された抑止力で平和を作ることもできないし
嘘や秘密でごまかしても必ず化けの皮が剥がれるし
力ずくで調和するダンスを踊ることもできない(51)
 
江戸も非暴力で無かったが利己に価値をおかず
利他性を重んじる仏教や儒教の教えが浸透した意識があり
「強欲と浪費」よりも「配慮と節度」を
大事にする価値観があったのだろう(52)
 
江戸は世界で最も大きな人口を持つ都市だったという
下水の代わりに農家における肥料として
換金の仕組みであるくみ取り制度が行こわたっていたし
水道も江戸中の巷まで行き届いていたというから
非情にきれいな都市だったようだ
 
問題を孕む参勤交代だがそれによって経済の循環もあって
分中の発展をきたすと同時に内需による循環を可能にした
税制が一次産業にのみ偏っていることで
商業やサービス業を甘やかす結果を招いた
産業革命と植民地を求める大航海につながるヘーゲルから見ると
内需による安定した循環経済も退廃する鎖国として
避難しなければならないのだろう
鎖国と言う言葉も後々つくられたものであって
キリスト教の布教を含めた西洋からの商人なども
朝鮮人も中国人も琉球からの使節団も参勤交代と同じように
ニホンを徒歩で縦断させることで様々な接触と情報を
世間にもたらしていたという
江戸での西洋医学の発展や銅版画や写真やレンズの国産化
博物学図版や書籍の輸入と国産化や学校制度や技術のマニュアル
などなど多くの情報を巷に取り込んでいた
江戸幕府が嫌っていたのはカトリックを尖兵とする
「善意」を装った侵略であり無限拡大思想だったのだという
 
経済とは国土を経営し物産を開発し内部を富豊にし誰もが貧困に
落ちこぼれないようにすることだという
 
民主主義が誠でありお互いの自由が本当に守られるのであれば
暴力や軍隊や警察国家による脅迫の必要などないだろう
 
自由と平和の意味については私と少し考えが違うようだ
自由は自分勝手であって
調和に辿り着けるものでないと思うし
平和には平等という個を否定するニュアンスがあって
お互いに違う存在をそれなりに認め合い
なおかつ切磋琢磨による調和という共同作業に
一体感を見出そうとする工程がないように思える