命の基本はループ 150117

命の基本はループ 150117
生命の意味論 多田富雄 新潮社を読んで
 
命の基本は切れ切れの競争にあらずして
調和のループであるらしい
 
一つの分子にはいくつかの原子が輪になってつくるタンパク質が
活動しているという
更に様々な分子が螺旋に連なってトータスな形となり
機能の違う細胞を組み立てる
すべての動きは自主的に連鎖することで成り立っているらしい
 
意味を持ったことを可能にするためには色々な輪をつなげて
トーラスな流れをつくる
一つの自律した輪から始まって螺旋となりトーラスとなっては
又螺旋で成長してトーラスに落ち着きという
入れ子状の循環によって生命体をつくり家族を構成し
仲間が集い地域社会へと無限に広がっている
この世はどこまも螺旋とトーラスの連鎖のようだ
その一方では分離して増幅するだけでなく
連鎖が切れたり折れたりゴミが溜まったり気持ちがそれたり
することで流れが滞り怪我とか病とか死という不都合が起こる
あるいは今という時間軸を外して過去の競争という迷路にはまり
未来を搾取することで生き延びようとする
無機物の原子から有機物の命が生まれて又原子の戻る
生と死の循環も織り込まれているらしいし
そこには更に素粒子との無限のループもあるのだろう
 
今という中心に近いほど裏表も陰日向もないけれども
過去の権利意識には表裏となる未来への不安が利息をつけて
まとわりつくようだ
 
多田さんの専門は免疫細胞に研究だということで
研究中のエピソードが満載のエッセイ集とも言えそうな本である
狭く絞られた専門職でありながら俯瞰していなければ描けない
視野の広い内容から沢山の発見を得ることができる
専門外だから自由にモノが言えると言いながらの
造語や空想や思いで目からウロコがイッパイである
 
生命は初めに目的有りきの過去を引きずる存在なのか
それとも居間を中心に創造し続ける生き物なのか
DNAは目指すべき目的を持っている道先案内人なのか
部分的なプロセスをこなすことで参加しているだけなのか
 
帯の言葉にもあるように
私という自己はどうして私なのか?
私の全てを遺伝子が決定しているのか?
彼独自の超システム論の概念で抽象的意識・言語の発展・都市問題
官僚機構などにも立ち入って生命というこの世全体を
見通しながら部分である専門分野を紐解こうとしているようだ