進化論に疑問あり リチャードミルトン 心交社

進化論に疑問あり リチャードミルトン 心交社
 
進化論こそが支配層にとって都合の良い理論であり
市民を権利依存による「競争社会」へと
追い込んだシロモノだということだ
 
この本には出だしから惹きつけられるが
本当に面白いのは後半である
生物学にとどまらず地質学・古生物学・発生学・比較解剖学
遺伝学・微生物学・動物学・植物学・
さらには哲学・倫理・政治学に経済学にまで及び
その内容は拍手喝采で納得できるものである
中でも248ページの「生命の真実」からのクダリが面白い
そこには147ページ前後にある
統計に関する議論もあって直接絡んでいる
特に支配体制にとってネオ・ダーウィニズムの進化論は
都合のいい理論となって教育など社会全般に利用されている
 
兎も角知的好奇心に直結できる内容自体が面白い
専門分野に閉じ込められている専門家よりも
全体を俯瞰することで視野の広い研究者となれる立場の
科学ジャーナリストが10年以上の時間を掛けて
検証した上で学問を牛耳っている学者の権力社会に
真っ向から丁寧に切り込む文章だから
利害と駆け引きの付きまとう学者の書くものと違って
率直で忌憚なく事実をありのままに伝えてくれるので
内容に集中して読み素直に判断することができる
 
著者は搾取を目論む権威社会からこっぴどく罵(ののし)られ
大人げなくもあらゆる手立てを使って葬られそうになるが
利害の伴わない世界中の率直な一般読者を得ることで
今のところ象牙の塔の多勢に無勢の関係から
逃げ切れているようだ
小説とドキュメントの違いはあるが
かつてダビンチコードにノメリコンだことを思い出す
 
まず最初に地球の歴史自体が学者や権利社会のご都合で
故意にねじ曲げられて来た事を百ページを費やして
事実による検証を見せてくれる
お上の肝入だったはずの放射性炭素年代測定が
著しく不正確だということには驚かさせられた
更にはそこから浮かび上がってくる古生物学へと
30ページに渡って導いてくれる
ここまでが本題である進化論の問題点へと進む入り口である
 
進化といえば馬の好きだった私が6年生の時の研究課題で
馬の歴史を百科事典などでまとめたことを思い出す
化石による進化の過程を調べ
その年代測定に炭素による放射性年代測定法が
使われることを知って興味をふくらませたことを思い
残念なことに子供心をトキメカせたこの両方共が証拠とならない
不確かな事であった事実をこの本で知る所となったわけである
 
真実を追求して知ることを愉しみにして科学者の道を
選んだはずなのに何故仮説や空想をまるで真実を見つけたように
装うのか不思議である
この自己矛盾に固執して検証すら拒み権力とツルンで世間を偽り
他と対立してしまうナンセンスに陥るのも不可思議である
トンプソンが「種の起源百年記念版」で
「立証できない推量で自然が示す区分を排除しようとする傾向は
種の起源から継承したものである
仮説の上に仮設を積み上げたもろい学説となって
事実と空想の混乱だ起こっている」と書いている
この生物学上の問題はプラトンの名目論と実念論にさかのぼり
決着していない
 
もしもダーウィンが言う生存競争で全てが行くならば
多様性の循環を壊してしまう
テリトリーを広げその環境を食いつぶして行くことによって
自分の足を食べて飲み込むなり共食いすることで
己のくいぶちや繁殖をなくして行くことになり
全くもって自己矛盾の極みとなる
宇宙全体を見渡す大自然はそんな視野の狭いバカなシステムに
陥ることはないだろう
 
コレも依存社会の嘘と秘密による騙し合いの建前社会に飲み込まれ
自分を見失ってしまうということなのか
いずれにしてもモッタイナイ人生であり情けない時代である