日本の気配 武田砂鉄 晶文社

日本の気配

日本の気配 武田砂鉄 晶文社

 

あまりにスラスラと流れる言葉にのまれて

まるでエッセイでも読むように軽く読み流していしまうけれど

内容に気づくと空恐ろしい環境にしてきた自分に愕然とする

 

〜「空気」が支配する国から「気配」で自爆する国へ〜

忖度という空気を大事にする利他的な国だった筈のかつての日本文化が

その高い教養と倫理観を自由勝手な競争原理と呼ばれる経済闘争主義に

むしり取られ

今や利己的に分断された個々が気配を先取りして自縛する時代に驀進する

本来ならば国民を忖度するボランティア精神であるべき公務員が

空気を悪用して開き直る政治家を筆頭とする公務員に成り下がり

そのメッセージの気配に依存するメディアを鵜呑みにする国民に陥る

こうした姿をあぶり出すフィールドワークがここに集約されている

 

暴力的でえげつないお笑いに落ち込んでいるテレビを見ない私のは

知らない名前や流行り言葉が沢山出てくるので浦島太郎気味になるが

この本が現状を垣間見るチャンスともなる

 

全てが建前社会で見え透いた本音が隠されていることを前提とする環境

建前とした民主主義を忘れて資本主義の自由勝手な競争が

民主主義の対等性から成る自在性だと思い込んでいる現状に唖然とする一方で

蜘蛛の巣のような依存心が蔓延してしる社会で

身動きが取れないことに悲鳴を上げるしかない恐ろしさ