おらおらでひとりいぐも 若竹千佐子 河出書房新社

おらおらでひとりいぐも 若竹千佐子 河出書房新社
 
随筆と読んでも良いように思うが小説らしい
不思議を醸す三人称の主人公
主人公は「桃子さん」と三人称で呼ばれているが
呼んでいるのは書き手である若竹さんなのだろう
でありながら
桃子さんは若竹さんそのものでもあるらしい
 
人はこの世に生まれ
世間にもまれながら
この世の不思議を思いめぐらして一生を過ごし
一人で死んでいく
その間に誰かを愛して別れ
多分育んだ子とも別れ
常に相手があっての自分でありながらも
自分中心の人生から離れることはない
どんなに身を挺して命がけで愛したとしても
自分の選択から逃れることはできない
 
過去を振り返ろうが未来に夢を広げようが
依存しようが孤立しようが自律へ向かおうが
今を選んで流れる以外に道はない
 
それでも命がけで愛す経験をすればするほど
良かれと思って身を挺すれば挺するほど
相手に認められようがなかろうが
その人生は満たされて納得できているはずだ

一つだけ気になったのは随所に難しい熟語が入ること
ルビを付けてまで難解な言葉を選ぶ意味があるのか
想念を書き起こしたこの文章に適しているとは思えない