戦争童話集1 野坂昭如 新潮社

戦争童話集1 野坂昭如 新潮社
 
小さい潜水艦に恋をしたでかすぎるクジラの話
青いオウムとやせた男の子の話
干からびた象と象使いの話
この三話が黒田征太郎の挿絵と共に描かれている
火垂るの墓ほど辛くはないけれど戦争が舞台なのだから
理不尽で人でなしの話で全てが飢えと死で終わることに変わりないけれど
そこには儚いながらも野坂さん特有の組織人間による愚かさと
個々のくじけない愛と情が淡々と滲み出している
 
個人的には私の生まれた前後の話で
特に上野動物園の話は身にしみる
何故ならば母が子供の頃から家で飼っていた樺太アイヌから送られた
「やろう」と名付けられたヒグマを戦時下の命で
上野動物園に起草させられた話を聞いていたからだ
閉園時間の後にオリの中まで入れてもらって遊んだことや
空襲が激しくなって毒殺された話だった
犬のようになついて兄弟のようにして育ち
家の中では放し飼いだったというから
さぞやくやしく悲しかったことだろう