日本はなぜ基地と原発を止められないのか 矢部宏治 集英社

日本はなぜ基地と原発を止められないのか 矢部宏治 集英社

 

素晴らしい読みがいのある本である
編集者が研究者となって書いた本

内容も深いし論文に近いが読みやすい

311の福島原発事故以来大きな疑問に目覚めた日本人

矢部さんは沖縄問題から地位協定を本格的に調べだし

2011年の地震原発事件で日米合同委員会の存在にのめり込んで行く

明治維新と名付けられた前後の時代から紐解き始め

戦後の不平等条約に引き続き平和憲法問題へと研究が深まっていく

2006年アメリカでの公文書開示によって明らかになった

形式だけの独立に伴う安保条約の日本国民に対する嘘と秘密が表面化した

そこには砂川裁判が日本政府・検察・最高裁などの全ての官僚組織が

アメリカ軍の方針のもとに働くという

日本の憲法をも凌ぐ権利を与えている日米合同委員会の支配状況を

この本が暴き出している

 

ここで統治行為論と言う筋の通らない支配的で依存搾取的な話が

民主主義を掲げる社会でまかり通っている現実

アメリカでもフランスでもありえない現実

国連における敵国条項戦勝国の五カ国のみが持つ決定権も

国連が掲げている趣旨と真っ向から対立している事実を無視したままである

そのくせ国連の経費を賄う最大の国はニホンである

 

日本は未だに占領当時の実態のままで米に対する国境もなく治外法権であり

基地を通して出入り自由である上に

日本の上空に対する航空権のほとんどを握ったままである

現状では独立国であるための領土も主権もないし国民という範疇も曖昧である

 

原子力村と呼ばれる日米原子力協定しかり

安保村となる日米安全保障条約しかり

全てはアメリカ政府を抜きにした日米合同委員会というアメリカ軍が

全て英語による会議と文書によって日本の官僚を支配することで政府を骨抜きにし

国民を蚊帳の外に囲い込んでいるという仕組がバレてきたわけだ

 

国土の一部でも占拠されている状況下で憲法を変更してはならない

国際的には《占領者は占領地の現行法律を尊重》というハーグ陸戦条約がある

がニホンにおけるアメリカ軍は日本人が望んでいるという理由でこれに違反している

 

現状のニホンでは憲法を人権保護から人権放棄へと後退させたい勢力

それはならじと現状維持をとなえる二派しかおらず

更に良い憲法を目指そうとする派がいないのが問題なのだけれど

実質占領状態なのだから現状維持しか選択しがないのである

 

民主主義世界のリーダーから基地帝国へと変貌したアメリカ

皮肉なことに70年前に自ら提唱して国連理念を今や自ら破壊している

最大の原因は国連憲章への集団的自衛権の追加にある
これは事実上の侵略行為となる

 

ニホンが主権の制限に同意した上で時刻の法の一部として取り入れる必要があったのは

アメリカとの軍事協定でなく国連憲章における国際法の原則にするべきだった