クラウドからAIへ 小林雅一 朝日新書

クラウドからAIへ 小林雅一 朝日新書
アップル・グーグル・フェイスブックの次なる主戦場

人工知能は60年前から
あらゆるジャンルの学者たちが一同に介して始められた
しかし答えを一つにしない相対的な脳のファジーな部分を
解決できずに論理と法則とルールによって挑戦した第一次は収束し
80年代に起こった第二次のAIは様々な業界の知識を持ち寄った
集合によって実用化に向かうが柔軟性に欠けた為に頓挫する
そして第三次が今盛り上がっているAIである
アルゴリズム統計学による確立的な方法で曖昧な部分を
柔軟に対処することによって無限大の領域を相手にできる可能性を持った
1997年チェスで世界チャンピョンを負かしたIBMディープ・ブルー
TVのクイズ番組で優勝したIBMのワトソン
あるいは音声操作によるsiriを導入したアップル
自動車の自動運転を目指すグーグルなどの各社
医療助手を務めるロボットや
掃除機のルンバなどが活躍し始めている
危ない話では無人偵察機から無人爆撃機や戦闘機
あるいは災害用ロボットを転用する兵隊ロボット

ビッグデータと呼ばれる世界中に人間の思考や趣向を網羅することで
シナヤカな答えを引き出しロボットが自ら情報処理をしながら
成長していくという具合で生き物に近づいてきた
ある意味知らね間にユーザーの情報によってロボットの成長を即され
下手をするとユーザーがロボットに管理されそのロボットの元締めが
全てを支配するというシナリオに成り兼ねないのである
翻訳機もユーザーがロボットに情報提供することで
生きた言葉を並べらる能力を高めていけることになる
アルゴリズムによる人気投票が人間の目指す目的と一致するとは限らず
狭い世界の迷路に紛れ込も危険な可能性も大きい

知識が次元の違う意識を賄えるかと言えば
ディテールが全体像を理解出来るかという話になり
処理と理解の違いが表面化してくる
統計による答えは処理しただけで理解してはいない
今は統計データで結果を出しているけれども
将来心とか意識と関わることになった場合にツマズクことになるだろう
そこで出てくるのが脳の動きを模倣したニューラルネットワーク
知覚メカニズムを模倣したディープラーニング
しかしレイヤが増えれば遅くなる
目の神経を聴覚野に繋いでも視覚能力を発揮するという
五感の相互変換が可能だということに目を付け
大量の情報から抽象化するために必要な本質部分だけを取り出すことで
コンパクトにできるようになる
されにyoutubeを使ってAIがネコの概念を自習することで
自力に獲得させることに成功する
画像認識だけでなく音声も言語処理も自習することで処理できる可能性を得た
クラウド型のサービスにすることで世界中にユーザー情報をサンプルとして得る
いよいよ人間の代わりとなる機会の誕生を迎えて何を考えなければならないか

柔軟な処理をするということは完璧でないわけで
その空白となるブラックボックス故のパニクッタ暴走や誤作動に
どう対応するかと言う問題や
いずれ依存の関係なのか対等な分業なのか
人権とロボット=ヒューマノイド権の調整が必要になるかもねと言う問題
人間のニューロンは1千億個でシナプスによって相手を選びながらつながるのに対して
AIは数万個の工学的ニューロンと少ないながらも同じような仕組で働く
いくら手塩にかけて育てても思うようには育たないのが現実ですから
ロボットも同じように危険をはらむ条件上にあるといえるのです
金融世界でもフラッシュ・クラッシュと呼ばれる誤動作が起こり
10分足らずで数十兆円が失われたと言う話もあるし
20秒間で株価が20ドルから1セントに暴落した企業もあるという

人間の仕事がなくなる問題をどう解決するか
オフィス・工場・倉庫での多能工
さらには病院の看護師や医者・
あるいは新たな雇用を生むか

最も飛躍して且つ有効だと思えるのはそれぞれの生き方に沿って
過不足のないベーシックインカムの採用である
実利的な生産のほとんどをAIロボットに任せ
人間は消費と創造とそれをこなすべき労働作業とを受け持ち
人間臭く抽象性の高い仕事を遊びとして深く関わっていける道を開く

ある意味原初の人間に戻って大自然の解明に挑む
その対象は無限にあるはずだ
全ての現象や心の動きに対して何故かと問い掛けて研究実験するのもありだし
現象自体にタユタウことをたのしんでもいい
更には出合った状態から起こる想念を写し取ってもいいだろうし
そこに創造を織り込んだ表現をするのもたのしいかもしれない
何しろ無限の可能性を孕んだこの世界を可能な限り
精一杯に出合った仲間と切磋琢磨することで未知なる今に挑戦し
視野を広げ新たな発見をし全体観を膨らませて行くことを
目指していられれば幸福なのだと思う