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縄文人の世界観 大島直行 国書刊行会

縄文人の世界観 大島直行 国書刊行会

 

納得できる最後の七章を先に読むことをおすすめしたい

その後で本文に入れば飽きずに読み通せるだろう

現代の物的競争世界の価値観を当てはめて解釈するのではなく

1万年という単位のギャップを飛び越えて思いを馳せ

読み解いていくという姿勢で

大胆に踏み込んだ発想にも共感をおぼえるし

資料も揃っていて読み応えもある

不死・再生・誕生・命の蘇りとそれを育む子宮につながる

満ち欠けの周期を持つ月と羊水をイメージした水と脱皮するヘビ

などを通して精神性を求めたという説からなる

これをシンボリズムとレトリックという観念を使って

対等に縄文人の謎に迫ったということにも同調できる

貝塚をゴミ捨て場とみず

再生を願う祭祀場と考えることにも同意する

 

更に所有に陥っている現代社会は物欲に特化した

格差という絶対の権利を主張する必要があり

自然摂理の補い合う全体観に包まれた環境に集う縄文人とは違い

普遍のシンボルである絶対的権威の象徴である太陽こそが

権力社会にとって重要な役割と成ると著者は言う
彼らは美や哲学を創造しているのではなく
実を求めて「効き目」を追求しているのだとも言う

 

知識も幅広く知的な内容だといえるのだけれど

そのくせ既成概念の抵抗が強いせいか

多様な全体観に結びつかない独善性が気になる

あまりにも思い込みが強いのか兎も角ひつこくクドイ

体制となっている学会の意見の違いを

攻め立てる姿勢にも辟易となる

この本の要点だけをまとめれば三分の一の厚みで収まるだろう

多様性に欠ける業界に物申す一つのアンチテーゼととらえて読めば

面白く読めるのかもしれない

 

彼自身が言う「考古学者見てきたような嘘をつき」を

自らはまり込んでいるようにも思える

 

写実的な表現は物的価値観に必要な技術であった

支配という神意識のない対等な関係にある縄文人には意味が無いことで

ひたすら再生を願い神話的世界をレトリカルに表現することが

重要だったとも読み解く