そもそも島に進化あり 川上和人 技術評論社
海は多様な命の母なのか
それとも阻むものなのか
まれに見る面白い本である
《はじめに》からふざけた引用的表現が多く
多読家である著者の
好奇心の旺盛さが滲み出しているが
それでも前半はプロローグなのだろう
後半になるほど面白さが際立つ
濃い内容を素通りしてしまいそうなほどに
読み安いのが欠点かもしれない
鳥が専門の学者でありながら
植物にはじまりあらゆる専門外に話が飛び交い
盲目的な今の御時世に逆らって
全体観を養うにもモッテコイの物語である
地球物理の始まりから宇宙を見晴らす未来に
目を開いてくれる
もっとも《序》の初っ端から「星の王子さま」の登場で
思わず本を閉じそうになってしまったが
我慢して読み進んだおかげで
この世の理について多くを考え直してみるヒントを得ることができた
つまりこの世は理不尽な競争原理で成り立っているのか
それとも意識に注目した全体観と部分感の相対関係が
調和による棲み分けと食物連鎖で補い合いながら
五分五分の冒険をたのしませてくれているのか
という問題についてである