メス化する自然 デボラキャドバリー 集英社
この本は一貫して生命の雌化や両性具有を引き起こしている
「人類の生殖健康に悪影響を及ぼす環境ホルモンの脅威」を訴えている
具体的にはDDTや枯葉剤の農薬に洗剤などの薬品であり
PVCなどのプラスティックであり
ピルなどのホルモン剤である
生殖健康つまり人間を含む地球のすべての生命が
すこやかに性と生殖を営む能力は今後の社会の重要なキーワードとなる
と訳者の後書きにある
このことは沈黙の春から表面化した生命存続に関わる大問題であり
いやが上にも企業を中心とする利権に関する支配層にも正確に理解されて
一般市民に広く浸透して行かなければ
こうした所有欲と利権獲得による乱開発という人類の愚行によって
生命のすべてを死に追いやることになるだろうとこの本は警告している
まずは日本名「静止画減っていく」の映像による環境ホルモン問題を
取り上げたドキュメント番組でエミー賞を取り
その後デンマーク・イギリス・ワシントン・ボストン・ノースカロライナに
フロリダと同時多発的に発見された多くの事実がレポートされた
発見する喜びや発表を拒否された悔しさや患者との交流で生まれた感動など
研究者の人間としての臨場感を伝えている
その後も引き続き取材を重ねて本書となった
男の赤ん坊に性食器の異常が目立ち50年間で精子の数が半減したと
欧米で報告された
同時期に乳ガンと前立腺ガンが増える一方で
野生動物にメス化現象や性転換に両性具有を起こしている多くの種が見つかる
それは実験の結果エストロゲンという女性ホルモンを暴露による変化である
その後合成科学物質に弱いエストロゲン作用が見られて
メスのホルモン類似作用が発見される
飲食によって浴びるケースも有るが自然界のエストロゲンは
数時間働いた後排泄されるが偽物のホルモン類似科学物質は脂肪に蓄積して
何年も残留することがある
実験では産まれたてのマウスにエストロゲンを投与すると
膣ガンや子宮ガンができることを発見した
人の場合に換算すると妊娠中のエストロゲン暴露で
適齢期になると性器における癌になる危険性が認められた
また自然界の魚類・爬虫類・鳥類・哺乳類に生殖異常が観察されている
ニジマスの卵黄蛋白を測定する方法を開発し
雄の血液中に雌しかつくらない卵黄蛋白を見つけた
環境ホルモンの検出に使えることを見つけた
ニホンでは1998年に10年前には見つからなかった川の汚染見つかった
農薬と違って熱を加えなくれば拡散するはずのない合成樹脂の原材料が
水中で発見された
界面活性剤の代謝産物も検出された
これらは放射能に劣らず長期的なダメージを起こすものであり
ひじょうにきけんであ同時に社会的な価値観と反比例する問題であることが
早期解決を阻む原因であることも原発と似ている状況にある