世紀末の預言者夏目漱石 小森陽一 講談社

世紀末の預言者夏目漱石 小森陽一 講談社
 
漱石が小説家というより思想家だったと知る
確かに人間と社会つまりは人間の内と外を理解することで
21世紀に至るまでに起るヒズミを見通していたに違いない
漱石は物質に依存する視野の狭い文明と
それに関わる精神を搾取する文化によって
民衆を支配する社会組織の成り行きを細かく噛み砕いた結果
部分性にとらわれて全体性を無視した時代に嫌気が差していたようだ
 
先を見据える透視力を得たのはひとえに深い全体観をとらえる
視野の広さを身に付けていたからだといえる
漱石の物欲から解放され自分の意識の有り様に気付いていたという
資質もさることながらしがらみから離れる英国への留学が
益々視野を広げ意識を解放することに
大きく関わっていたことも確かなことだろう
 
長い歴史を費やしてきた物質文明への依存を卒業して
自律した意識の時代へと舵を切るタイムシフトの波を
近い内に迎えることになるのだろうと思う
それにしても私達が21世紀の後半を見ぬくために
重要な手掛かりとなる内容を持った本であることに間違いない
 
物質文明の最後の砦となるだろう金融システムが持つ魔性が
NWOとなって地球の全てを食い尽くした時侵略先を見失い
自ら作る津波の反作用に飲み込まれ自滅を迎えることになるだろう
 
悪魔と神の違いは今という単純明快な自律を目指すことで創造するか
過去という複雑怪奇な依存に逃げ込んで今を破壊するかの
紙一重の選択の違いであるらしい