大江戸妖怪かわら版2・3・4  香月日輪 講談社

大江戸妖怪かわら版2・3・4  香月日輪 講談社
 
2=異界より落ち来る者あり
3=封印の娘
4=天空の竜宮城
一話ごとに付く違う視点からの解説と用語辞典が
時代考証や言葉遣いの面白さを教えてくれる
 
盆暮れ彼岸などのケジメをしっかりと生き抜き
宵越しの金を持たぬと粋に暮らす庶民や
日々朝晩欠かさぬ掃除洗濯とマメに精を出し
襟を正して正月を迎える姿勢などを見るにつけ
現代の暴力社会と比べてみても
当時の人々が積極的に社会参加している様子が伺えて
無益な戦争のない300年の平和を維持することの
難しさを思い知る
 
庶民の自発的な相互扶助寺子屋に始まる文化が
政治によって社会の安定と不安恐怖の少ない環境に
支えられていたことを証明しているのではないだろうか
 
今後の社会をお互いの対等性と自在性を基本に
創造していく上で
参考にすべきことも沢山あるように思う
 
作者の思想の一端を書き写すならば
すべての者が何の憂いもなく
暮らしてゆけていないことが大事なのだ
何の憂いもない世界などありえない
豊かな特産物があろうとその恩恵にあずかれない者もいる
そこでダメな者は別の場所や方法でうまくやるしかない
 
しかしだからこそ諦めずに
すべての者が喜びを持って冒険できる無限の可能性を目指して
生きていくのがこの世の使命なのではないのだろうかと思う
生きる糧を求めるのは手段でしかなく
目的は輪の発見と創造である倫理の追求ではないのか
 
だとすれば使命のベースとなる衣食住を満たすべく
信頼感を養い過不足なく在るはずの物資を
個々にとって必要十分な分配をすればいいだけであり
社会はその調整をするボランティアのばである
この信頼をベースとして切磋琢磨し
無限の真理を解放して行く冒険を精一杯愉しむのが
ロマンに満ちた人生だろう
そうでなければ虚しいばかりだ