エレファントム  ライアル・ワトソン 木楽舎

エレファントム  ライアル・ワトソン 木楽舎
 
昔《生命潮流》や《未知の贈り物》や絵本のような《水の惑星》を
読んで以来のワトソンさんである
 
この本は永遠のゾウとの巡り合いを書き起こすと同時に
ワトソン自身の歴史を綴るというもう一つの姿を持ち
最後の執筆とされている本でもある
 
フロリダに栖む7歳の少年ルーキーの話から始まる
その内容はこの本の本題の一つでもある
時空を超えたコミュニケーションに付いてである
ルーキーは鋭い感性を持ったダウン症の男の子である
湿地の散歩とそこに住む生き物達との出合いを
父親とともに愉しんでいた
言葉が苦手でボディーランゲージを使っていたが
ある日父には見えない動物が登場して通じない会話に落ち込み
TVに登場したゾウを見たことでそれがゾウであると判明したけれど
アメリカでは1万年も前に鼻の長い動物はいなくなっていた
つまりルーキーは時折1万年越しの幻を見ていることになる
 
ワトソンは南アフリカ喜望峰で生まれ育つ
いたずら盛りの10才から13才までの4年間の夏休み
1ヶ月の間親から離れて町の男の子だけで
海の合宿生活をすることになっていた
それは自給自足の生活で水と食材を自分達でまかなっていた
2年生の時に三人で水を探しに遠出をすることになり
そこで運命を変える幻の白いゾウと出合い釘付けになる事件が起こる
それと同時に弓矢を持って羊の皮をまとった人と巡り合う
彼は先住民のホッテントットとかコイサン族であり
年寄りなのか若者なのか分からなかった
本物のストランドローバーだった
彼の名前は「!カンマ」
サバイバルの知識と技術を教わりながら
言葉の交換をしてしばらくの間毎日いっしょに暮らしたが
ある日忽然と消えてしまう
 
この二つの出逢いが彼の一生を形成する大きな転機となる
ここで意識や五感以上の感覚や存在との出合いを求める
生き方に強く惹かれることになる
ネルソン・マンデラが27年間閉じ込められた初めの頃である
 
《名前は単なる記号でない・重みと歴史を持ち支配の扉ともなる》
《答えのない答えを探せ・それこそが大事な問だ》
《母性は個であり得ず共同体の中心であり太母と呼ばれる》
雌のゾウはいつも大きな存在の一部として自分を認識している
単独の太母(母系制)は存在し得ない
雌が一頭だけになったらもはや何者でもない
 
最後の7章《時空を超えて》で語られるコミュニケーション
というものの無限性は全体観を理解する
個意識の悟りへの入り口となるかもしれない
集合意識と繋がる道程なのかもしれない
 
バーニークラウスは「野生の聖域へ」で音の棲み分けという考えを
持ち出しているという
それぞれの種は音響的領域を持っている
生命の全ては自分達専用の周波数帯を分け持っている
地球中に広がって交信できる
クジラとゾウは超低周波や高周波を使って
種を超えたコミュニケーションをしているかもしれない
 
可能性が無限に広がる何ともロマンのある話ではないか