眠れる遺伝子進化論 四方哲也 講談社

眠れる遺伝子進化論 四方哲也 講談社
 
かつて生態学者の今西錦司がネイチャーで発表した
進化のメカニズムとして「種は別れるべくして別れる」
と述べたそうだが
残念ながら観察以外の具体的な証拠を示すことができず
欧米のネオダーウィニストたちの利害に弾き飛ばされた
 
その共生することによる「棲み分け論」をも納得させる
実験による共生関係にある生命の証拠を示しているのが
四方さんの仕事でありこの本の内容である
 
大腸菌を使った何世代にも渡る実験で
弱肉強食論や突然変異による最適化論や自然淘汰論や
適者生存論など主観的な「なぜ?」と
競争原理社会に都合の良い初めに答有りきの議論が多い中
客観的に「どのようにして?」と問う科学の原点に戻って
研究した結果相互作用による変化を突き止め
四方が「競争的共存」と呼ぶ多様性による共生関係を示し
効率化による勝ち残り説の矛盾をいくつか上げるなら
わかりやすい後付による説明であり
最適だと権威付けた途端に肝心な進化を
止めてしまう皮肉な事になってしまう
つまり普遍的な説明になっていない
 
コレに対して四方は「複雑化による負けない生き残りが」
大方の自然界の姿だと言う
 
残念ながら題名に魅力を感じなかったので
半信半疑で読み出してみるまでは
これほど面白いとは思えなかった
題名が内容を的確に表していないように思う
 
競争原理による
弱肉強食社会を推進するために都合のいい
ダーウィンの進化論が示す対立する「自然淘汰論」に対して
 
その矛盾を実験データーによって突き崩し
私達の住むこの自然界を
相互作用による多様な「共生的環境」だと証明した
 
相互作用はそれぞれに役割分担を生み出し
その組織が大きくなると分担が複雑化して
安定(無限性)に向かう
それを部分的に見ると非効率を意味する
ここで言う非効率はゆとりの有り過ぎるDNAや脳
更にはややこしいオスメスの分離にも通じ
一見無駄を孕んだ環境にも見えるが
急がば回れという全体観から見れば合理的なのだろう